厚生労働省の発表によると、2019年度の有料職業紹介事業所は25,684ヶ所。1998年度の3,498ヶ所から約7.3倍となっています。日本の生産年齢人口が20年以上も減少しつづけている現状を考えると、これが決して自然な状態ではないことがわかります。
この転職エージェント戦国時代、大手はマスメディアで認知度勝負に出てきますが、あなたが中小規模エージェントさんであれば、焦って同じ土俵に乗ってはいけません。
では、認知度では劣ってしまう中小規模エージェントが、求職者さまから選ばれるにはどうすればよいのでしょうか。
人材紹介の集客に重要なのは2つのアイテム
中小規模エージェントが選ばれるようになるために、重要なアイテムが「認知されるメディア」と「ホームページ」です。
なぜなら、獲得できる求職者の数は「認知された数(認知媒体の強さ) × 申込率(受け皿の強さ)」だから。かけ算だから当然、どちらがゼロでも結果はゼロ。どちらも伸びれば乗算で伸びていきます。
ホームページだけ作っても流入経路の設計ができていないと何の役にも立ちませんし、どれだけ多くの人に知られていても申込がなければ売上はゼロになります。
それを念頭に置いて、まずは「認知」について考えてみましょう。
人材紹介の集客に活用しやすい媒体4つ
認知媒体とは、その名の通り一般の求職者さんに貴社を知ってもらうための媒体のこと。貴社の存在を知らないかたと接触できる場所を指します。
認知媒体の役割は、貴社のことを知ってもらい、「この会社のことをもっと知りたい」と思ってもらうことにあります。
さて、どんな媒体が考えられるでしょうか。
これがもっとも王道ですね。ビズリーチやdoda、AMBIなどのダイレクトリクルーティングメディアを使ったスカウトメールです。
ここで、ユーザー目線からの注意点!
スカウトメールは、1日に数十件も送られてくるもの。企業からのメールならともかく、エージェントからのスカウトメールは本当にどこも同じに見えてしまいます。試しに一度、ユーザーとして登録してみるといいかもしれませんね。
送信数に応じてコストがかかるため、予算の限られる中小企業であれば、量とともに質(メールのタイトルや内容)を意識してみるといいでしょう。
TwitterやInstagram、Facebookに代表されるSNSも、王道で取り組みやすい認知媒体のひとつ。
たとえば、Twitterは20〜30代の求職者にアプローチしやすいSNSです。Instagramはデザイナーやファッション関係者が多く利用している傾向にあります。
Facebookはその2つよりやや年配層が多い傾向ですが、そういった年配層とつながりを持ちたい若年優秀層の利用も見過ごせません。
各SNSの特色を見極めながら、転職エージェントとしての個性を出したアカウント運用が肝要です。
自社で運営するメディアのことです。ホームページのひとつではありますが、公式サイトとは違い、まだ転職を本格的に考えていない層にまでアプローチできるのが特徴です。
オウンドメディアの運用は、SNSやSEO施策とセットでおこないます。
▼オウンドメディアでの集客について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
【動画あり】中小企業こそオウンドメディアを持つべき理由!メリット、作り方も解説 【これで完璧】オウンドメディア運用の目的とは?検索で「勝つ」ためのポイントも解説!いわゆるGoogle検索でのリスティング広告や、SNS広告、YouTubeなどの動画広告を指します。広告をクリックしたあとの遷移先は、専用のLP(ランディングページ)を用意することもあれば、公式サイトにそのまま飛ばすこともあります。
以上が人材業界で主に使われている集客方法ですが、その他にも口コミなど活用できる手段は様々。認知してもらいたい求職者さまのペルソナや割けるリソースをもとに、有効に使える媒体を選びましょう。
▼ペルソナの作り方についてはこちらの記事をご覧ください。
良質なペルソナの作り方【マーケティング現場ですぐ活用できる実例付】そして、認知の「手段」以外にも忘れてはいけないことがあります。
集客にかけてよい予算上限(広告予算)を決める
集客費用について考える
集客に使える予算についても、しっかり考えておきましょう。
予算を決めるに際して、まずは集客費用の考え方とその計算方法について触れておきます。
集客費用とは、CMやオンライン広告などの純粋な広告費だけを指すわけではありません。求人プラットフォームの掲載料、スカウトメール費、プラットフォームへの成約手数料など、変動費も含めた求職者が面談申込に辿りつくまでにかかっている費用すべてが含まれます。
まずはすべての合計を計算してみましょう。
集客費用 = (広告宣伝費の合計)
それが現状の「集客費用」です。
求職者一人あたりの予算上限を考える
求職者一人あたりの集客費予算上限は、以下のように考えることができます。
求職者一人あたりの集客予算上限 = (営業利益+上記の集客費用)÷ 獲得求職者数
「営業利益 = 売上高 ー 売上原価 ー (集客費 + その他の販売管理費)」なので、集客費用を二重に計算しないよう、上記の計算式では営業利益に足し戻しています。
その上で、いくらかけるべきか「決める」
上記「求職者一人あたりの集客予算上限」は、本当の意味での上限です。つまり、上限ギリギリまで使ってしまうと、損失は出ないが利益もまったく出ないということ。どれだけ手元に残したいかを加味して、予算を決めていきましょう。
たとえば、以下のような人材紹介会社があったとします。
- 年商1億円
- 営業利益率15%
- 年間獲得求職者数 1,400名
- 集客費 年間3,000万円
- その他の広告なし
そうすると、
求職者一人あたりの集客予算上限 = (営業利益1,500万 + 集客費 3,000万)÷ 1400名 = 32,142円
求職者を一人獲得するための上限予算は、32,142円となります。これは手元に残る利益を計算に入れていない数字になりますので、それを加味して、最終的に決断することになります。
この紹介会社が、あるスカウト媒体に月間100万円を払っているとします。そして1ヶ月で獲得できた求職者を25名とすると、一人あたりの集客コストは4万円。これでは完全に赤字です。
このように、広告媒体ごとにそれぞれ集客コストを洗い出し、費用対効果の悪いものについては運用の仕方を検討するなどといった判断をしていくことが重要です。
人材紹介会社のホームページ制作のコツ
さて、流入の方法と予算が定まったところで、次は「受け皿」について見ていきましょう。
中小規模のエージェントがホームページを作る上でもっとも重要なことは、「一般のひとにとって自社は特別ではない」と謙虚に受け止めることです。たまたま名前を知ったから見にきた程度、特別な思い入れはないので、特徴がわかりづらければすぐに離脱してしまいます。
中小規模エージェントでは、ホームページを戦略立てて活用できているところは少ない印象です。
スカウトメールに興味を持って社名検索されたとき、たまたま流れてきたツイートに共感してプロフィールからサイトに飛んだ時、どんな内容であればより魅力を感じてもらえるでしょうか。
「大手感(=整ったテンプレート感)」は絶対NG
貴社が「大手」であれば、もちろん大手感を出すのは問題ありません。ですが、中小規模のエージェントさんであれば、ほとんどのケースで大手感を出すのは悪手だと思います。
大手感ってなによ?
というお声が聞こえてきそうですが、たとえばこちらパソナキャリアさまのサイトをご覧ください。
大手感、漂っていますよね。これといった特徴を持たせず、「パソナキャリア」というお名前だけで登録させられる企業ならではのサイトです。
しっかりした会社であるという安心感はありますが、どうしてもシステマチックな対応をイメージさせます。
そしてこちらはリクルートエージェントさま。
有名人を使うことでイメージ訴求をしていますが、このかたたちがキャリアコンサルをしてくれるわけでないのは明白なので、やはり独自の強みらしきものは伝わってきません。
数日経ってしまえば、(ファンのかた以外は)どっちがどっちのサイトだったか忘れてしまうくらいの印象なのではないでしょうか。
ホームページといえば「美男美女の写真にキレイなキャッチコピー」というイメージがあるかたもいらっしゃるかもしれませんが、あまりに整ったサイトは印象に残りません。
貴社が圧倒的認知度で求職者を獲得する大手エージェント型でないのであれば、第一印象のインパクトを大切にしましょう。(次項に、第一印象でターゲットにインパクトを与える弊社クライアントサイトをご紹介します)
ターゲットの悩みにググッと寄り個性を出す
では、中小規模のエージェントがつくるべきはどんなサイトなのか?
それはターゲットの脳裏に焼きつくサイトです。
あたりまえのことですが、まずはターゲットをしっかり設定しましょう。同じIT希望者向けでも、第二新卒向けか、ブランクのあるかた向けか、ハイクラス向けか。自社のサービスがどの層向けなのかを考えれば、おのずとターゲットは明確になってくるはずです。
こちらは、弊社クライアントのIzulさまサイトです。機密保持の関係でくわしくはお伝えできませんが、経営戦略により、ターゲットの変更がおこなわれ、公式サイトも一新されました。
リニューアル前も後もかなりの面談申込を獲得していますが、制作においてもっとも意識しているのは「ターゲットがどんな気持ちで転職を考えているのか」です。
ターゲットによってページ構成も言葉選びもまったく変わります。
そして、特に気合を入れて考えたいのがキャッチコピー。貴社の信念を、ターゲットにもっとも強いインパクトを持って伝えられる言葉を探しましょう。
バイネームでコンサルタントが指名できるくらいのコンテンツ
SNSなどで転職エージェント利用者の声を聞くと、
転職エージェントは「コンサルタントガチャ」だ
なんて評価を目にすることがあります。
小売業などとは違い、「ひと」が売りものの転職エージェント。無形商材であるからこそ、誰が担当するのかが非常に大事になってくるでしょう。
こちらはクライス&カンパニーさまサイト(弊社の制作ではありません)。
単にプロフィールを紹介するだけでなく、クチコミや信念、執筆コラムなど、あらゆる側面からその人がわかるようになっています。
SNSの流行もあり、「個の時代」だといわれる昨今。会社ではなくコンサルタント自身が選ばれる流れは、今後ますます加速していくでしょう。
「求職者の声」を読んでもらえるコンテンツにする
意外に思われるかもしれませんが、ホームページによく設置される「求職者の声(ユーザーインタビュー)」というのは、案外読まれないものです。理由は二つ。
言わされた感が信用できない
これはわかりやすいですね。エージェント本人が作っているサイトのインタビューで、「イマイチでした」なんて言える求職者はどれだけいるでしょうか。
また、そんな声があったとして、掲載するエージェントはどれくらいいるでしょうか。
どのサイトを見ても判で押したように絶賛の言葉が並ぶ「求職者の声」は、一般のかたにとって簡単に信用できるコンテンツでないということです。
「比較検討」フェーズでしか必要とされない
これは、求職者が【貴社を「認知」して「興味」を持ち「他社と比較検討」、最後に申込をする】という流れの比較検討フェーズのこと。
あなたがweb制作会社を探してホームページを閲覧するときのことを想像してみてください。
まず初めにプレア(弊社)という会社を知ってから、次に知りたいと思うのは、サービス内容や価格、制作実績などではないでしょうか。
大半のかたは、「いいな」と思って問い合わせを検討する段階で初めて、「クライアントの声」を読みたいと思うはず。
この一連の流れのなかで、ユーザーはどんどん離脱していきますので、どうしても「求職者の声」は読まれづらいコンテンツになってしまうのです。
でも、リアルな声はキラーコンテンツになりうるので、たくさんの人に読んでもらいたい!
ならば、たとえば「興味」フェーズで読まれるコンテンツと組み合わせてみましょう。
こちらは再度、弊社クライアントのIzulさまサイト。
「サービスの流れ」というコンテンツに、求職者さまの声を組み込んだものです。ヒートマップツールなどのデータから、かなり興味を持っていただけていることがわかります。
求人票で勝負しない
最後はこちら、「求人票で勝負しない」。もちろん、他社が持っていないような求人がたくさんあるのなら、それで勝負するのはとても自然なことです。
ですが、他社と同じ求人票を見せるだけなら、モノ売りと同じ。まして先手必勝が大原則の人材紹介業では、それで認知度の高い大手に勝てるわけがありません。
求職者が自分で求人票を検索できるシステムの制作にコストをかけるくらいなら、前述のような、ユーザーを惹きつけるコンテンツを充実させましょう。ターゲットの精査やホームページ戦略などの前提条件などに力を入れるのも、貴社にしかない強みが表現できる賢い選択です。
まとめ:人材サービスの集客強化は、「認知」と「受け皿」を整えよう!
ここまで、中小規模の人材エージェントが求職者さまに選ばれるための集客方法について見てきました。
- 人材企業の集客には、「認知媒体」と「受け皿」が大事!
- 主な認知の手段は4つ
- 求人媒体(スカウトメール)
- SNS
- オウンドメディア
- オンライン広告
- 手段だけでなく予算もふまえて戦略を決める
- ホームページ制作のコツは「悩み」に寄り添う貴社の個性
年々数を増やしている転職エージェントの中で選ばれていくには、流入経路と申込までの動線を戦略的に整えていくことが重要です。
「数あるエージェントの中のひとつ」ではなく、「このエージェントにお願いしたい!」と求職者さまに思ってもらうために、集客媒体だけでなくホームページのコンテンツを充実させていきましょう!