こんにちは。ペルソナしてますか?(謎の問いかけ)
ペルソナ、よく聞きますよね。マーケティングに詳しくなくても、聞いたことあるという方が多いかもしれません。
ペルソナについての教科書的な解説は、ネットで検索していただければ良いまとめ記事がいくらでも出てきますので、詳しい解説などはそちらに譲るとして、今回は、私がとある企業様でペルソナを作成した際に、実際に行った作業を超リアルに、そして具体的にご紹介していきたいと思います。😇
一応前置きとしてペルソナについての簡単な説明も記載しておりますが、それより事例が見たいという方は、目次から「ペルソナってどうやって作るの?」へどうぞ。
ペルソナマーケティングとは?
ターゲットというのが「30代女性」などといったユーザー「層」であるのに対して、ペルソナはたった一人を描いたユーザー「像」。
心理学用語では表面的な(他人から見える部分の)「人格」を指します。
ペルソナとは、企業や商品の典型的なターゲットとなる顧客像のことです。ペルソナで定められる顧客像には、氏名や年齢、居住地、職業、年齢、価値観やライフスタイル、身体的特徴までのかなり細かい情報が盛り込まれます。(*1)
つまり、ターゲット層のうち「一人」をあたかも実在するかのように描写し、その人に自社の商品を購入してもらうには?を検討するための材料とする重要なマーケティング手法ですね。
弊社では、webサイト制作の前に必ず作成することにしています。
なのですが、始める前に必ず注意しておいていただきたいのは、ペルソナというのは「理想の顧客像」ではないということ。
たとえば、お金があって、クレームも言わず、他社よりちょっと高い「うちの商品」を迷わず買ってくれ、SNSで勝手に宣伝してくれる人。
それはたしかに「理想の顧客」だけど、そんな人実在しないですよね。
ペルソナとは実在するかのようなリアルな人物像です。「作る」というよりは「知る」という表現のほうが近い。
「〇〇さん(ペルソナ)は子どもが3人いるから外出は大仕事だよ!」とか、「〇〇さんは面倒くさがりだから駐車場があるところじゃないと行かないはず」とか、そんな会話を可能にするのが良質なペルソナです。
理想の顧客について語り合うのではなく、実際に自社の商品を買ってくれるであろう顧客のことを深く知って、チーム全員で共通認識を持つ。
そのためにペルソナはあるのです。
具体的な活用方法
残念なことに、ありがちなのがペルソナを作って満足してしまうパターン。
こういった手を動かす作業って、形になっただけですごく「やったった感」出ちゃうんですよね。。わかる。
そうならないために、「どう活用するのか」の出口イメージをもって、目的を見失わないようにしましょう。
ペルソナマーケティングはユーザー顧客の心の動きや行動を、しっかりイメージする目的のためにあるのです。
作成したペルソナを実際のマーケティングでどのように活用するのか、詳しくはまたいずれ別の記事で書くとして、ここではもっとも分かりやすい使い方を一つだけご紹介させていただきますよ。😎
たとえば、こんな活用方法
ペルソナができると次の段階で作成できるものの一つに、カスタマージャーニーマップがあります。
商品サービスが購入される前後の動きを可視化して、どのタイミングでどんな接触をするのが適当か検討するという手法です。
これを作ることで、「ユーザーはこのタイミングでこういった疑問が浮かぶだろうからこんなチラシを用意しよう」など、ピンポイントでコンテンツを用意することができるようになります。
これを作るには、一人の人間をありありと思い浮かべられるようなペルソナが必要です。年齢、性別、趣味、悩み、休日の過ごし方、情報収集のしかたなどが含まれます。
スマホを頻繁に使う30代女性と、ガラケーを使用している30代女性では、情報の受け取り方が全く違いますもんね。
他にもホームページを制作する際の指針だったり、広告を打つときの媒体選びだったり、とにかく迷ったら「ペルソナに聞いてみる」という感覚。伝わりますでしょうか。
ペルソナってどうやって作るの?
ではいよいよ!実際にペルソナってどうやって作るのか。
私が実際に作ったペルソナ像を追いながら、ご説明してまいりまする。
実際に私が作ったペルソナ
まずは実際のペルソナをどうぞ。
こちらはよくある「街の不動産屋」の経営者。
何で収入を得ているのか、短期的、長期的に不安に思っていることは何なのか、といったことを羅列しています。
いい笑顔、ダンディですね☺️
決めるべき項目は?
ペルソナを作る際、「一般的にはこういうことを決めます」みたいなマニュアルはネット上にたくさん転がっているんですが、それどおりに作る必要は全くなくて、要は自分が売りたい商品サービスの購入意思決定に関わる情報が全て得られればよい。
というのが基本ルール(というかマイルール)です。
「ペルソナ 作り方」などで検索していただければ、たくさん記事が出てきますので、いろんな記事のいいとこどりで作っていきましょう。
余談ですが、ネットで見つけて、ちょっと笑ってしまったのがこれ。
よく口にする言葉、口癖
ルフィだったら「海賊王に俺はなる」、金田一少年なら「じっちゃんの名にかけて」、タラちゃんなら「カツオにいちゃん、なにするですか~」かな。(違う)
いや、まぁそれは良いとして、
一回ある程度しっかり作ったら、なにか足りない情報が出てきたときに「〇〇さん(ペルソナ)だったらどうするやろうね?」という会話が可能になりますよね。
逆に言えばそれができなければペルソナ設定が甘いということですので、それができる程度を目安にするとよいと思います。
実際の作り方(私の場合)
先に前提をお伝えしておきますと、今回は「街の不動産屋さん」にフランチャイズ事業を提案するというミッションのもと、ペルソナマーケティングを行いました。
そのため、経営の意思決定に関わる情報を集めています。
まずは机上で情報収集
いきなりターゲットにインタビュー!などといった現場への直撃は極力避けたほうがよいです。
なぜかと言うと、検証したい仮説や疑問がなければ、せっかく現場に行っても得られるものが少ないから。
(時間や状況が許すなら、何も調べずにターゲットと接触、会話や観察していくという方法もあります。学術的な研究などによく使われる方法のようです。)
まずは「この疑問を解決したい!」という点が明確になるまで、できる限りの情報集め。
ここがペルソナ設定においてもっとも地味な作業ですが、グッとこらえて机上にて自分と闘います。
具体的に何をするの?
具体的には、「街の不動産屋さん」ってどんなビジネスモデルなの?を調べるところから始めました。
(このへんは、気軽に聞ける相手がいれば聞いてしまってももちろんOKですが、今回は聞くより調べたほうが早そうな状況だったので調べました😇)
- 私が想像できるのはアパートの賃貸だけど、あれって手数料どれくらいとれるんだろう?
- 賃貸事業って単価が安いし「街の不動産屋さん」にお客さんがたくさん入っているイメージもないけど、ほかに何か収入源があるんかな〜。
- そもそも「うまくいっている街の不動産屋さん」って、どれくらいの利益が出てるんやろ?(サービス導入にかけるコストを捻出できる?)
で、その疑問を解決すべくGoogleさまを利用し、「街の不動産屋 儲かる」で検索して出てきた記事がこちら。
私が宅地建物取引士をすすめる理由は、パソコンとファックスさえあれば自宅でも簡単に開業でき、成約すれば買い手を紹介しただけで「(売買代金の3%+6万円)×消費税1.08%分」の仲介手数料がもらえるからです。
(「街の不動産屋」はいつも暇そうなのになぜつぶれないのか *2)
さらに「不動産屋 賃貸 手数料収入」で検索した記事がこちら。
まず不動産会社自体の業務としては大きく分けて賃貸斡旋・土地建物の売買・管理という3つに分けられます。その中で管理専門にやっているところもあれば、売買専門にしている会社もあり、様々です。以下は不動産会社(企業)が得る報酬の形です。
(不動産屋さんの報酬・収入体系はどうなっている?賃貸・売買・管理の収入について *3)
ほかにも記事を漁ってみましたが、どうやら「うまくいっている不動産屋」というのは、土地や建物の売買が主な収益源になっているらしい、ということがつかめます。
それもやり手経営者になるとかなり儲かりそうだぞ、というイメージ。
数字の把握に関しては、「経済センサス」のデータや考察を確認したり、
公的機関が出している資料を読み漁ったり、
などなどをしながら、「街の不動産屋経営者が中長期的に抱えている経営課題はなんだろう」についての仮説まで導き出します。
ちなみに、定量的なデータや定性的なコラムを鑑みて、私が考えた経営課題(仮説)は以下のようなものでした。
- 地価の下落により、主力収入源である売買仲介手数料が減少している。今後も上がることは見込めない。
- 物件情報を得るために、地元有力者とコネクションをしっかり作る人海戦術でここまで来たが、そのスキルやコネクションを引き継げる若手が育たない。
- 自分がコネクションをもってきた有力者も、代替わりをするタイミングである。
ここからようやくフィールドワーク(ターゲットユーザーに接触)
ある程度ペルソナの輪郭がつかめたところで、ここからようやくフィールドワーク。
自分が立てた仮説を検証するとともに、机上では得られなかった以下の項目について、できる限りの情報を集めることを目的に定めました。
- 「街の不動産屋経営者」って何歳くらいなんだろう。
- 従業員は何名?
- 家族構成は?
- これから事業をドンと成長させたい?それとも堅実に今のペースを保ちたい?
お察しの通り、上記のような状況や考え方というのは、当然人によって違います。
不動産経営者のなかには30歳の方もいれば50歳の方もいるでしょう。
2歳のお子さんをお持ちの方もいれば、20歳のお子さんをお持ちの方もいるでしょう。
でも、自身が30歳でお子さんが20歳というケースはほとんどないはず。(例外はありますが)
大切なのは「一人の人間として」「リアルな姿」を描くこと。
必要であれば30歳と50歳の不動産屋経営者、2パターンのペルソナ像を描いてもよいのです。
フィールドワークって具体的に?
オフィスの外に出て、実際肌身で感じながら情報収集をするのがフィールドワークですが、
ペルソナ設定でよくやるのはこのあたりです。
- 対象者にインタビュー
- 現場に行ってみて観察
既存顧客など、インタビューさせてもらえる方がいるのであれば、その方にインタビューをさせてもらうのがベストです。
むしろ名前や家族構成など「作る」必要もなく、その方をペルソナとして理解を深めていけばよい。
ですが、今回のフランチャイズは新規事業だったため、残念ながらざっくばらんにお話が聞ける既存顧客がおらず、
実際に選んだ方法としては「潜入調査」と「クライアント(フランチャイズ展開元)へのヒアリング」でした。
店舗への潜入調査(ユーザーへの接触)
何回やっても慣れないのがこれ、(覆面)潜入調査。
街の不動産屋さんに訪問し、実際に会話をしながら得られる情報をさまざまな角度から拾ってきましたyo。
(このときは賃貸アパートを探している人を装ってお邪魔したのですが、笑顔で対応してくれた奥さまに心をつかまれ、せめてものお礼にと引っ越しを検討している友人に紹介しました。。😂)
得られた情報は、
- 奥さまも接客現場に出る
- 経営者自身は業者対応をしていた(50歳くらい)
- ほかには営業事務の若い女性が一人
- 今はいないが営業の方もいるらしい
- 来店客は私のほかにいない
- ただ、想像していたよりはオンラインプラットフォームからの集客(賃貸)がありそう。
などなど。
で、実はこの潜入調査をしたあとに、今度はSNSを使って経営者さん、奥様について調べています。
そんなふうにフィールドと机上を行ったり来たり、地道な作業を繰り返して明確なイメージを固めていくのです。
クライアントへのヒアリング(インタビュー)
不動産業界には当然私よりクライアントのほうが詳しいので、仮説や理解の方向性にズレがないか随時確認を入れていきました。
ただ、これが不思議なもので、こちらが知識のない状態で聞く「どうですか?」は、仮説をもって聞く「相違なさそうですか?」と比べて確実に返答精度が落ちるんですよね。
なので出来るだけ私はイエスノーで答えられるクローズドな質問から、だんだんオープンな質問に広げていくようにしています。
お互いにストレスなく進められるのでなかなか良いですよ😊
また、今回は答え合わせ+追加の意見出しでクライアントへのヒアリングを入れましたが、
ペルソナの輪郭がぼんやり見えてきた段階で、クライアントを巻き込んでしまってワークを行うのもオススメ。
ケースバイケースで、クライアントの知識が最大限に活かせることを考慮しつつ作業を進めていきます。
そして、できたのが前述のペルソナです。
いろんなやり方があるのですが、今回はこんな感じ。リアルにイメージできたでしょうか?
BtoB でも BtoC でも使えるの?
今回はBtoBの事例でしたが、もちろんペルソナはBtoCでも活用されています。
チーム全員の頭の中を統一することが目的なので、ビジネスの業態はあまり関係ないですね。
ちゃんとやろうと思ったら意外と骨が折れますが、それだけ価値があるものなので、ぜひやってみましょー😊
*1) https://ferret-plus.com/words/2080
*2) https://diamond.jp/articles/-/179143
*3) https://www.interest-blog.com/entry/fudousan/kasegu
*4) https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/201903/201903_1gaikyo.pdf
*5) https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2018pdf/20180801123.pdf